自律神経症状とは
自律神経系は末梢神経系のうち内臓機能調節を担います。
平滑筋、心筋および腺を支配し、呼吸・循環・消化・代謝・分泌・体温維持・排泄・生殖など、生体にとって最も基本的機能の調節を担当しています。
自律神経系は随意的な制御を受けずに機能し、この点が体性神経系(同じ末梢神経系であるが、運動神経と感覚神経の機能を有する)との大きな違いです。これゆえ自律神経系は「植物神経系」、「不随意神経系」とも呼称されます。
自律神経症状はテレビなどで言われる自律神経失調症とは異なります。
自律神経系は交感神経系、副交感神経系より成りますが、これらが変調をきたすことによって起こる症状を自律神経症状と呼びます。(図を参照ください)
具体的には
瞳孔 | 対光反射異常などによる眩しさ、ピントが合わないなど |
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涙腺・唾液腺 | ドライアイ・ドライマウス |
汗腺 | 発汗障害、無汗症など |
肺・気管 | 咳嗽 |
心血管 | 起立性低血圧、起立不耐(立ちくらみ、動悸、失神)、不整脈など |
消化管 | 便秘、下痢、イレウス、胃麻痺、アカラシアなど |
膀胱 | 尿閉などの排尿障害 |
性機能 | 性機能障害 |
などがあります。
自律神経障害をきたした症例によっては上記の多くの症状を呈することもありますし、非常に限定的に症状を呈することもあります。
自律神経症状の有無を確認するとき、「○○の症状はありますか?」と尋ねて「その症状はありません」と患者さんが答えたとしても、自律神経機能が保たれていることが確実なわけではありません。正確に自律神経症状を把握するためには自律神経機能をチェックする検査を行う必要があります。
文責
中根俊成(日本医科大学付属病院脳神経内科)